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野 辺 の 花

 

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作品紹介文

巡り来る春の喜び
うなじをくすぐる春の風
少女はいつしか恋をして
愛を知る

花のにおい 鳥の声
川のせせらぎ 
あの人の影

朝露にぬれる 野辺の花
私を手折って抱いて下さい
誰も知らない遠くの町へ
連れ去って欲しいのです

去年の春 進学の為に この村を離れて遠くの町へ行ってしまった人が居ます。いつも草の
上に寝ころんで 空を行く雲と山の彼方をながめ 思いにふける物静かな人でした。
私はその横顔がとても好きでした。言葉をかわすことも 目を合わすことも出来ないまま
ただ遠くから見ているだけの片思いの恋でした。その人が居なくなり 時間が経つとともに 恋しい想いは次第に強くなり 息苦しい程の切ない毎日です。どうかもう一度私の目の前に姿を現わし 黙ったままそっと手を引いて この場から連れ去り 二人だけの時間の部屋の片隅に 朝露にぬれるこの花を飾ってほしいと願う花の気持ちを描きました。






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作家名

若林薫



(投稿日:2023年12月05日 12:12)







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